Blog
9.302018
SWOT分析のやり方と事例~戦略実現のためのチャンスとリスクを導き出す方法とコツ
機会と脅威・強みと弱みの視点で内部・外部環境を分析する方法
SWOT分析とは、ビジネスやマーケティング戦略の目的・目標を実現する上で、内部・外部の環境因子を強み、弱み、機会、脅威視点で分類整理するための手法です。市場や顧客の状態、競合の動向を無視した自分たちの思いだけで立案したビジネスプラン・マーケット戦略は成功しません。SWOT分析で自分たちを取り巻く内部環境、外部環境を調査分析してビジネスのチャンスとリスクを整理しましょう。
SWOT分析の5つのステップとやり方を事例を交えて紹介します。
<目次>
SWOT分析とは
SWOT分析の5ステップ
ビジョンの明確化
強みと弱みの整理
機会と脅威の整理
内部・外部環境の調査分析
内部環境の調査分析の方法
外部環境の調査分析の方法
チャンスとリスクの分析まとめ
SWOT分析とは
SWOT分析とは、ビジネスやマーケティング戦略の目的・目標を実現する上で、
内部・外部の環境因子を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats)視点で分類整理するための手法です。
この強み、弱み、機会、脅威の英語の頭文字をとって、SWOTと呼びます。
SWOT分析の目的と意義
経営計画やビジネスプラン、マーケティング戦略を立案するとき、自分たちを取り巻く環境がどのような状態にあるか把握しなければなりません。
市場や顧客の状態、競合の動向を無視して、自分たちの思いだけで立案したプランは成功しません。
自分たちを取り巻く内部環境、外部環境を調査分析するのに有効な手法の一つがSWOT分析です。
内部環境、外部環境分析を行うとき、あまりに対象範囲が広く、何から手をつけていいかわかりません。
ですから、まず、SWOT分析を使って、自分たちを取り巻く環境の仮説を立てます。
自分たちの内部、外部環境の因子とその関係について、強み・弱み、機会・脅威の視点で整理して、分析対象範囲・内容を明確にするのです。
仮説を立てただけでSWOT分析は終わりではありません。
ここまでは、ただの机上論です。
立てた仮説に基づいて、実際の内部、外部の環境調査と分析を行い、裏付けをとります。
得られた裏付けに基づいてSWOT分析でまとめることで、内部・外部環境分析が信頼できるものとなるのです。
SWOT分析は、信頼できる内部・外部環境の調査分析を効率よく行うための手法です。
SWOT分析の5ステップ
SWOT分析のステップは次の5つです。
ステップ1 ビジョンの明確化
外部環境、内部環境の分析対象のビジネスのビジョンを明確にします。
ステップ2 強み、弱みの整理
対象のビジネスに関する自社の強み、弱みを明確にし、内部環境の仮説を立てます。
ステップ3 機会と脅威の整理
対象ビジネスにおいて、機会となること、脅威となることを明確にし、外部環境の仮説を立てます。
ステップ4 内外環境の調査・分析
立てられた仮説に基づいて内部、外部の環境について調査分析を行い仮説の裏付けをとります。
仮説と矛盾があったり、想定外の事項があったときは、仮説の追加修正を行って、もう一度、調査分析を行います。
ステップ5 チャンスとリスクの分析まとめ
強み、弱み、機会と脅威の各交点での状態を分析し、対象ビジネスにおけるチャンスとリスクを明らかにします。
ビジョンの明確化
ステップ1は、ビジョンの明確化です。
外部環境、内部環境の分析対象のビジネスのビジョンを明確にします。
3から5年後の、そのビジネスのありたい姿を描きます。
今のビジネスより、さらに進化、成長している姿や競争力を高めている状態を明確にします。
数値目標などを示すと、より具体的なありたい姿とそのレベルがイメージできます。
強みと弱みの整理
ステップ2は、強み、弱みの整理です。
対象のビジネスに関する自社の強み、弱みの仮説を立案します。
まず、自社の強みを考えてみてください。
対象のビジネスにおいて、他社に比べて自分たちの強いところを明確にしてください。
イメージできない場合は、競合の弱いところを考えてみてください。それが自分たちの強みかもしれません。
また、顧客より評価を受けている点なども考えてみましょう。
売り上げが高いとか、製品が売れているとか、性能がよいなどという結果としての良さではなく、良い結果を生み出す力の強さを明確にしてください。
次に、自社の弱みを考えてみてください。
対象のビジネスにおいて、他社と比べて自分たちの弱いところを明確にしてください。
競合の強いところを考えてみてください。それが自分たちの弱みかもしれません。
顧客からのクレームや要望なども考えてみましょう。
自分たちがまだまだできていないこと、足りないことを明確にしましょう。
機会と脅威の整理
ステップ3は、 機会と脅威の整理です。
対象ビジネスにおいて、機会となること、脅威となることの仮説を立てます。
まず、脅威を考えてみてください。
自社を取り巻く環境の中で、対象のビジネスにおいて脅威となることを明確にしてください。
自社だけでなく、競合にとっても同様に脅威となることです。自社の弱みと混同しないようにしましょう。
脅威は、環境の変化が、今のままでは、マイナスの影響を与えるものです。
顧客や市場においてもマイナス影響となるものです。
次に、機会を考えてみてください。
自社を取り巻く環境の中で、対象のビジネスにおいて機会となることです。
自社だけでなく、競合にとっても同様に機会となることです。自社の強みと混同しないようにしましょう。
機会は、環境変化を活かす取り組みをすることによって、プラスの影響を与えるものです。
顧客や市場においてもプラス影響となるものです。
同じ環境変化が、機会と脅威の両方となる場合があります。
そのような環境変化については、どのような条件で機会または脅威となるのか明確にします。
内部・外部環境の調査分析
仮説として整理された強みと弱み、機会と脅威について、裏付けを得るための調査と分析を行います。
内部環境の調査分析の方法
内部環境の分析は、
会社の経営、財務状態の分析、
保有する人材や組織の分析、
自分たちの製品やサービスに関する分析、
自分たちの業務の分析によって、仮説の強みと弱みの裏付けをとります。
経営・財務の調査分析のやり方
経営、財務分析は、経営の管理構造や状態の見える化について分析します。
経営計画や戦略を受けて、利益計画、予算管理、損益管理、実績管理の仕組みが機能しているか分析します。
経営戦略を立案しても、それを実行して、管理する仕組みがなければ、戦略は絵に描いた餅です。
会社の経営状態を見る指標が明確化され、測定されているかも分析します。
会社の今の状態や戦略遂行状態がしっかりと見えるようになっていなければ、暗闇の中を手探りで歩いているようなものです。
人材・組織の調査分析のやり方
人材、組織の分析は、社内の人材の専門性や能力レベルの状態、組織構造について分析します。
人材アセスメントによって、人材の専門性や能力レベルについて、その高さとバラツキ、分布を分析します。
人材アセスメントによって、人の持つ力のすべてを調査、評価できるものではありませんが、上司などの主観に基づく評価だけに頼るのも問題です。
様々な評価手段を用いて、客観的に人材の状況を把握していきます。
製品・技術の調査分析のやり方
製品、技術分析は、自分たちの製品、サービスの技術レベルや市場でのポジションを分析します。
製品-市場マトリックス分析では、製品、サービスを既存製品、新規製品と区分し、市場についても既存市場と新市場に区分して、それぞれの交点における製品と市場アプローチの違いを分類します。
そして、現在、自分たちの製品、サービスは、どの分類に属しているのか、明確にします。
同様に競合のポジションも明確にして、自分たちとの違いを整理します。
業務の調査分析のやり方
業務分析は、自分たちの業務の内訳やレベルについて分析します。
業務量調査では、どのような業務に、どれだけの工数を費やしているか分析します。
自社の競争力を高める上で、一番、多くかけてほしい業務に、しっかりと工数をかけているか分析します。
顧客へのサービス性向上やノウハウ蓄積になる仕事を多くしているか見ましょう。
外部環境の調査分析の方法
外部環境を分析する時は、その環境変化が自分たちにとって、機会であるのか、脅威であるのか、または、その両方であるのかを整理することが大切です。
外部環境の分析は、
会社全体に関わるマクロ環境分析、
自分たちの製品やサービスの市場分析、
自分たちの顧客についての分析、
自分たちのビジネスの競合の分析によって、仮説の機会と脅威の裏付けをとります。
マクロ環境の調査分析のやり方
マクロ環境分析は、政治、法規制、経済、地球環境、文化や流行など、会社の存続など全体に関わる環境についての分析です。
マクロ環境の変化は、ニュースや業界紙などの情報から取得します。
その変化が、自分たちの業界にどのような影響があるのか、顧客や外注など取引先にどのような影響があるのか、そして、自社へはどのような影響があるのかを整理、分析します。変化からの影響については、ニュースや業界紙からは十分に分析できないので、関連団体や顧客、外注先からも個別に情報を集めます。
市場の調査分析のやり方
市場分析は、自分たちの製品やサービスの市場に関する分析です。
市場規模の変化、市場の成長性の見通し、競争環境の変化、流通チャネルの変化などの分析です。
市場の成長や競争の変化をつかむには、その市場の製品やサービスの名称や特徴を表すキーワードについて、インターネットで検索動向を調べます。
ヤフーやグーグルなどの検索サイトでは、ネット広告を出す人向けに、検索キーワードの件数や推移を無料で調べるサービスがあります。
このサービスを利用して、製品やサービスの名称や特徴のキーワードが、どのくらい注目されているのか知ることができます。
自社のホームページのアクセス状況からも自分たちの製品やサービスの市場の変化を知ることができます。
ただし、自社のホームページに、製品やサービスに関する技術的情報などを掲載しておかなければなりません。
自社の製品やサービスの単なる紹介ではなく、製品やサービスの技術的知識を高める情報や活用事例の紹介などを掲載します。
ブログやフェイスブックなどによって、継続的な情報発信をしていくことで、ホームページへの誘導を高めることも重要です。
製品やサービスの市場における成長性や競争環境は、価格に表れることが多いです。
自分たちの製品やサービスの価格と同等品の競合品の価格を調査して、その差や、時間的変化を見ていきます。
全体として低価格傾向ならば、製品やサービスは成熟化して価格競争に入っている。
安定価格であれば、需要がまだまだあり、成長段階にある。
一社だけ飛び抜けて、高い価格がある場合は、その製品、サービスには、他にない魅力があり、一人勝ち状態にある。
このように価格から、市場と製品、サービスの動向を読み取ります。
自分たちの製品、サービスのライフサイクルにおける他社の関わりを調べることで、流通チャネルの変化を読み取ることもできます。
流通チャネルの変化は、多くの場合、上流や下流のサービスを担っている会社の進出でおきます。
逆に、自社も上流または下流への進出のチャンスがあります。
上流、下流の会社を調査して、そこの動きに注目しておきます。
顧客の調査分析のやり方
顧客分析は、自分たちの顧客を認識すること、顧客の中で起きている変化、顧客の抱えている課題の分析です。
自分たちの顧客を整理します。
ビジネスの流れに沿って、直接の販売相手、利用者、メンテナンス、廃棄など、自分たちの製品やサービスの恩恵などを受ける人たちを明確にします。
直接の販売相手、利用者だけに注目して、メンテナンス会社の声に耳を傾けなかったために、保守性の問題が解決されず、結果として、製品、サービスの市場競争力を失ってしまった例はいくらでもあります。
耳を傾けるべき相手をしっかりと明確にして、情報収集しましょう。
製品やサービスの問題からも、顧客の変化を見ていくことができます。
今まで発生しなかったクレームが増えた場合、製品、サービスの顧客の利用目的や環境が変わってきていることが考えられます。
新しいクレームは、製品、サービスの問題と片付けないで、顧客の変化の有無について分析しましょう。
競合の調査分析のやり方
競合分析は、競争業者、売り手、買い手、新規参入業者、代替品についての分析をします。
競争業者は、自分たちの、現在の製品、サービスの直接の競争相手です。どこが競争相手で、どのような取り組みをしているのか分析します。
ドレッシングの事例では、競合のポイントは利便性です。
売り手は、自分たちの製品、サービスに必要な原材料やサービスの供給者です。
供給先や供給方法の変化によって、自分たちのビジネスに影響してきます。
事例では、自家製ドレッシングづくりを後押しする動きが見られ、顧客のドレッシングへのこだわりや原材料を見る目が厳しくなるという変化を引き起こす可能性があります。
買い手は、その販売力を背景として、プライベートブランド化など行い、供給チャネルの固定化、囲い込みが見られます。
新規参入業者は、他地域ブランドの製品、サービスの進出や全国化、海外ブランドの参入が考えられます。
代替品は、顧客の価値観や趣向などの変化によって、今までにない、製品やサービスが代替品となってしまうということがあります。
競合は、直接の競争相手だけではなく、以上、5つの相手の動向を分析しなければなりません。
より直接的な競合分析は、競合相手の成功事例を詳しく分析することです。
製品、サービスの技術的特徴だけでなく、品質やコスト、納期での訴求点、営業アプローチについても分析し、自社との違いを明確にします。
チャンスとリスクの分析まとめ
ステップ5は、交点の分析です。
これまで整理してきた、強み、弱み、機会と脅威の各交点での状態を分析します。
強み、弱み、機会、脅威は、それぞれが単独で影響することはありません。
それぞれが絡み合ったとき、自分たちに何が起きるのか、どんなチャンスがあるのか、検討しましょう。
脅威に対して、自社の強みが作用したとき、他社を引き離すチャンスがあるかもしれません。
弱みが作用したときは、ビジネスを失うリスクがあるかもしれません。
機会に対して、自社の強みが作用したときは、飛躍のチャンスがあるかもしれません。
逆に弱みが作用したときは、他社に引き離されるリスクがあるかもしれません。
強み、弱みの因子と機会、脅威の因子がそれぞれ絡み合ったとき、どのような問題があるのか、または明るい展望があるのかを考えてみましょう。
以上のSWOT分析結果を経営計画やビジネスプラン、マーケット戦略へインプットします。
SWOT分析の動画も公開中!ご覧ください。
Copyright © 改善と人材育成のコンサルソーシング株式会社