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8.302018
ファシリテーションとは~必要な知識・スキルと手法を使いこなすコツ
ファシリテーション手法の場づくり・対話力・合意形成力とは
ファシリテーションは、会議やプロジェクトで合意形成や相互理解を高めて、チームとしての自律的な問題解決を促し、業務課題を解決することで組織の業務遂行力を高めることをめざします。チーム力を強化するファシリテーションは、場づくり、対話力、合意形成力の3つの手法を使いこなすスキルと手法が必要です。チーム活動を円滑に進め、成果を最大化するための支援する「ファシリテーター」に必要なこれらスキルと手法、進め方のコツを紹介します。
<目次>
ファシリテーションとは
コーチングとファシリテーションの違い
ファシリテーターが行うこと
チーム力強化のためのファシリテーションに必要なスキルと手法
・場づくりの進め方とコツ
・対話の進め方とコツ
・合意形成の進め方とコツ
ファシリテーションとは
まず、ファシリテーションの意味から見ていきましょう。
ファシリテーションは、英語で、容易にすること、促進、助成、助長などの意味があります。
ファシリテーションとは、「チーム活動が円滑に進むように、そして、チームの成果を最大化できるように、中立的な立場で支援すること」です。
また、ファシリテーションを行う人を、ファシリテーターと言います。
ファシリテーションは、ビジネス分野での問題解決や教育研修、「まちづくり」などの社会活動分野、学校教育分野での教育や体験学習など、様々な分野で活用されています。
上下関係や利害関係がある会社や仕事のなかでは、本来、中立的な立場で行う必要があるファシリテーションを、完全に行うことは非常に困難です。
ここでは、リーダーや管理者が、ファシリテーションのスキルの活用することで、チームの能力を引き出すスタイルのリーダーシップを発揮する方法を紹介していきます。
※リーダーシップについては次の記事で詳しく紹介しています。
コーチングとファシリテーションの違い
問題解決でのファシリテーションの活用などと話していると、コーチングとファシリテーションの両方を知っている人から、コーチングとファシリテーションの違いがわからないという声が聞こえてきます。
コーチングとファシリテーションの違いを説明しておきます。
「自律的な問題解決を促す」という点は、コーチングとファシリテーションに共通していることです。
では、「自律的な問題解決を促す」対象はどうでしょうか?
コーチングは、「個人」に対して行います。
ファシリテーションは、「チーム」に対して行います。
個人が対象か、チームが対象かということも違いになりますが、もう一つ大きな違いがあります。
コーチングでは、「自分の考えや行動を深く振り返ることから得られる本人の気づき」により、自律的な問題解決を促しますが、
ファシリテーションでは、「メンバー同士の相互作用から得られる気づき」により、自律的な問題解決を促します。
ファシリテーションでは、他の人とぶつかり合い、お互いの違いを知ることで、自分たちの壁を打ち破り、成長していくのです。
ファシリテーションでは、この相互作用を大切にします。
シナジー効果をねらって、自律的な問題解決を促すという点で、お互いに協力し合い、高め合う、チーム力強化に役立ちます。
※コーチングについては次の記事で詳しく説明しています。
ファシリテーターが行うこと
それでは、ファシリテーションのイメージをもっと明確にするために、よくある「話し合い」という場面において、ファシリテーターが行うことを説明します。
まず、「場をつくる」ことから、ファシリテーションは始まります。「場をつくる」段階では、チーム活動の枠組みを決定したり、雰囲気づくりを行ったりします。
次に、参加者個々の想いや意見を受け止め、引き出します。この段階では、参加者が自由に想いや意見を発言できるようにしたり、チーム意識を醸成したりして、参加者の相互理解が深まるようにします。
次に、議論をかみ合わせながら整理し、論点を絞り込みます。この段階では、想いや考えを語る自由な発言を引き出すだけでなく、論理的に議論をかみ合わせて、議論の全体像が見えるようにしてわかりやすくし、 論点を明らかにします。
次に、合意に向けて意見をまとめます。創造的なコンセンサスをめざします。
最後は、合意後の振り返りを行います。合意ができれば、活動を振り返り、学びを明らかにして、次に活かせるようにします。
ファシリテーターは、それぞれの段階で、ファシリテーションのスキルを発揮して、活動を進めていくのです。
チーム力強化のためのファシリテーションに必要なスキルと手法
チーム力強化のためのファシリテーションに3つの手法があり、必要なスキルと力があります。
それらは、「場づくり」、「対話力」、「合意形成力」です。
「場づくり」では、チーム活動の場を設定し、チームづくりを行い、チームとして活動していくプロセスを設計します。
「対話力」を高めることで、メンバー一人ひとりを尊重し、向き合い、相互に信頼感を高め、 それぞれの想いや意見を受け止め、引き出し、相互理解を深めることを行います。
「合意形成」では、創造的なコンセンサス(合意)に向けて意見をまとめていきます。
それでは、3つのスキルと力のそれぞれについて説明します。
場づくりの進め方とコツ
まず、「場づくり」です。
「場」とは何でしょうか?
経営学者 伊丹敬之氏の著書『場の論理とマネジメント』によると、「場とは、人々がそこに参加し、意識・無意識のうちに相互に観察し、コミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働き掛け合い、相互に心理的に刺激する、その状況の枠組みのこと」とあります。
場は、相互作用、シナジー効果が生まれる枠組みであると言うことができるので、チーム活動を行ううえで、「場」は必要不可欠なものとなります。
チームとしての活動の場をつくるには、次のことが必要です。
1つ目は「目的・方針の明確化」です。
目的とは、方針に則した、自分たちのめざす姿のことです。あるべき姿のような、理想の姿ではなく、頑張れば手が届くような、実現したい姿のことです。
方針とは、チームの向かうべき方向や、共有する価値観・原則・こだわりです。
これらを明確にして共有します。
2つ目は「目標の明確化」です。
目標とは、方針に則して、目的を実現するために、期限をきって、到達すべきことを示したもののことです。
何を、いつまでに、どれだけ行うのか、数値目標を明確にし、到達できたか否か測定または判定可能なものにします。
3つ目は「ルールづくり」です。
活動で、メンバーや関係者が協力し、整合した行動がとれることを確実にするために、活動ルールを設定します。
4つ目は「プロセス設計」です。
目標に到達するまでのストーリーを明確にします。いつ、どのような形で活動を進めていくのか、チーム全体の動きを設計します。
5つ目は「チームづくり」です。
活動推進のための活動体制を明確にします。リーダーとメンバーを明確にし、活動のなかでのそれぞれの役割を明らかにすることが、責任感を持たせ、協働参画意識を高めることにつながります。
対話の進め方とコツ
それでは、チーム力強化ファシリテーションに必要なスキルと力の2つ目、「対話力」について説明します。
「対話」ですから、1対1のやりとりが基本になります。「対話」を通じて、メンバー一人ひとりを尊重し、向き合い、相互に信頼感を高めそれぞれの想いや意見を受け止め、引き出し、相互理解を深めます。
対話のポイントは、「信頼感」、「受容」、「感情の明確化」、「相手も尊重した自己表現」、の4つです。
それぞれについて見ていきましょう。
信頼感
まず、「信頼感」から説明します。「信頼感」を醸成し、高めるには3つのポイントがあります。
1つ目は「日頃の仕事ぶり」です。
日頃の仕事の仕方がいい加減だったり、きちんとした指示も行わずに仕事の結果だけを見て叱ったり、評価したりしているような場合は、メンバーに「信頼感」を持ってもらえません。ある特定の活動においてだけ、信頼関係を築くことは非常に難しいでしょう。日頃から、お互いの信頼関係を築くようにします。
2つ目は「公平感」です。
複数のメンバーがいる場合、人によって、明らかに扱いが違ったりすることも、「信頼感」を持ってもらえない要因の一つになります。人間ですから、好き嫌いはあるでしょう。また、合う合わないもあります。しかし、行動に対する対応や評価、、信賞必罰など、公平に行うようにします。
3つ目は「守秘義務」です。
仕事の相談だけでなく、メンバーから、様々な相談を受ける場合があります。その際に、メンバーより「みんなには内緒にしておいてください。」といった発言があったときはもちろん、プライベートなことなどを、ついうっかりであっても、他の人に話してしまうようでは、「信頼感」は持ってもらえません。それどころか、「不信感」を持たせることになってしまいます。相談だけでなく、上司だから知っているような、その人が抱えている特殊な事情などは漏らさないようにします。
信頼関係づくりのために
信頼関係づくりのために、すぐに実行できることは、声掛け、挨拶、相手の名前を呼び掛けること、「ありがとう」を言うこと、ほめること、相手の意見を尋ねること、相手の話を聴くことです。
相手を認めることが信頼関係を強化します。
受容
次に、「受容」について説明します。「受容」は相手との人間関係に影響を及ぼす可能性があります。
「受容」は「傾聴」とほとんど同じことだと、理解していただいて構いません。「受容」では、「聴く」ことが大切になります。
「聴く」ことの効果は、「安心感」、「信頼」、「本音」、「気づき」、「聴いてくれる」の5つがあります。
相手の話を聴くことによって、相手に「安心感」が生まれます。
そして、相手が「信頼」してくれるようになります。
そうなると、相手から「本音」が出てくるようになります。
また、話をうまく聴くことによって、相手が自分で「気づき」はじめます。
相手の話をしっかり聴くことによって、相手も自分の話を聴いてくれるようになります。そうなると、対話が成り立ち、伝えたいことが伝わる可能性が大きくなります。
それでは、「受容」のための「聴く」ポイントを見ていきましょう。
1つ目は「話の内容に集中する」です。
話を聴いているなかで、時間を気にして時計ばかり見ていたとしたらどうでしょうか?相手は話を聴いてくれていないと思い、次に話すことをやめるでしょう。話を聴くときはそれに集中します。しかし、仕事で忙しいなかで時間をつくる必要がありますから、話を聴く時間は、最初から決めておき、相手にも伝えておくとよいでしょう。
2つ目は「相手の話を最後まで聴く」です。
相手の話をさえぎらず、最後まで聴きます。
3つ目は「相手の話を受け止める」です。
話を聴きながら、相手や相手の話を評価したりするのではなく、そのまま受け止めます。
4つ目は「うなづきや相槌を行う」です。
相手が話しやすいように、うなづいたり、相槌をうったりして、聴いていることを伝えます。
5つ目は「相手の感情や価値観を理解する」です。
相手の感情や感情の流れ、価値観を理解しながら聴くことで、相手を理解するようにします。
相手の心理にうといこと、価値観の相違、幼児的な性格などが、「受容」を阻害する要素です。得手不得手はあるかもしれませんが、チャレンジしてみましょう。
感情の明確化
次に、「感情の明確化」について説明します。
「感情の明確化」は、対話のなかで行います。
話を聴いているなかで、相手の感情表明が漠然としていた場合、相手がはっきりと認識していないところを言葉にしたり、質問をしたりして、本音が出るのを助けます。
相手の心の底にあるものを出すために、相手に投げ返すことが大切です。
相手も尊重した自己表現
次に、「相手も尊重した自己表現」について説明します。
自己表現には大きく3つのタイプがあります。
1つ目は攻撃的な自己表現です。
人には、他の人には入ってきてほしくない「個人の境界」があります。
攻撃的な自己表現では、その「個人の境界」を無視して、自分の考えや意見を相手に押し付けるような言い方や行動で、結果として相手を傷つけたりします。
相手を尊重しない自己表現です。
2つ目は非主張的な自己表現です。
他の人に影響を及ぼすリスクを冒そうとしない自己表現です。自分の主張をしないことで、一見、相手を大切にしているように見えることもありますが、相手を尊重しているようで、相手に率直でなく、自分にも不誠実であるということもできます。
相手に自分の考えや気持ちが伝えられない自己表現です。
3つ目が「相手も尊重した自己表現」です。
自分を率直に表現しながら、相手も尊重した自己表現を行います。
相手も尊重した自己表現を行うポイントは3つあります。
まず、自分の感情や考えを正確に捉えることです。
自分がその状況で何を考え、何を感じているか、何を表現したいのかを正確に捉えて、Iメッセージで伝えることが大切です。具体的な事実を伝える場合を除いて、「私」を主語として、相手に行動を促すメッセージを、Iメッセージと言います。Iメッセージは、あくまでも「私」が主体なので、相手が素直に聞き入れられる傾向にあります。
次に、周囲の状況や相手を客観的に観察することです。
相手に状況がわかるように説明し伝えるために、観察した事実に基づいて話します。相手も納得できる事実を伝えることで、お互いに共有できる話し合いのベースができます。
次に、自分の要求や希望を明確に伝えることです。
前述の2つのポイントを踏まえて、次に、自分の要求や希望を明確に、できるだけ具体的に提案します。また、相手の返事に合わせて、複数の選択肢を準備しておくことも必要です。提案したからと言って、受け入れられるかどうかはわかりませんが、話を次のステップにもっていくことができます。
以上が「対話のポイント」の説明です。
合意形成の進め方とコツ
それでは、「合意形成」について説明します。
合意形成において、大切なことは何でしょうか?
メンバーを説得することでしょうか?
いいえ、説得ではなく、メンバーが納得できるかどうかが大切です。
内容自体への納得があるのが理想かもしれませんが、メンバー全員が、内容に心の底から納得している状態にすることは難しいものです。
しかし、メンバーが自分たちで決めることによって生まれる納得感を感じることはできます。
ですから、ファシリテーターが決定したり、説得したり、代替案を出したりすることはしません。
ファシリテーターは、チームが自律的に合意形成できるように働きかけます。
コンフリクトへの対応
合意形成を行う過程では、意見の相違があり、対立や衝突が起きたりすることがあります。
この対立や衝突を、コンフリクトと言います。
では、合意形成を行ううえで、コンフリクトの発生は問題なのでしょうか?
答えは、ノーです。
意見の相違や対立は、人間性や性格の対立や否定ではありません。
コンフリクトそのものが問題なのではありません。
コンフリクトにどのように対応するかが重要なのです。
それでは、コンフリクトへの対応について見ていきましょう。
心理学者のトーマスとキルマンの、「5つの対応モード」を説明します。
コンフリクトの対応には、「競争的モード」、「受容的モード」、「回避的モード」、「妥協的モード」、「協調的モード」があります。
縦軸に「自分の考えを表現する能力」を取り、横軸に「他人を深いレベルで理解する能力」を取ると、図のような配置になります。
「競争的モード」の対応では、相手を犠牲にして、あるいは、説得して、自分の利益を中心に解決していきます。
「受容的モード」の対応では、自分の要求を抑えて、相手の要求を受け入れることで解決していきます。
「回避的モード」の対応では、その場で解決しようとせず、対立する状況そのものを回避しようとします。
「妥協的モード」の対応では、お互いの要求水準を下げて、部分的な実現を図ろうとします。
「協調的モード」の対応では、お互いの立場の違いを尊重し、協力しながら事態を解決していきます。創造的な解決策になることが多いです。
どのモードで対応するのが良いかというと、原則として、「協調的モード」です。
なぜかと言うと、最も発展的な関係につながり、お互いにとって、より大きな成果が得られるからです。
強調的・創造的合意形成で、Win-Winの関係をめざします。
合意形成するためのペイオフマトリックス
合意形成において、大切なことは、メンバーを説得することではなく、メンバーが納得できるかどうかです。
合理的で、納得感のある意思決定を行うための方法の一つにペイオフマトリックスがあります。
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