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3.82018
トヨタ方式の見える化を理解するための3つのキーワード
トヨタ方式の見える化=「目で見る管理」を理解するためポイント
見える化とは“見えないもの”を見えるようにすることです。
では、見えない何かとは何でしょう。
その何かがわかれば見える化の理解が深まります。
<目次>
・見える化とは
・見える化は人に行動を開始させるトリガー(引き金)
・見える化は主観を排し、事実に基づく行動をさせる(現地現物)
・見える化は夢を見せ期待させる
見える化とは
トヨタの「見える化」とは、見えるようにすることです。
何もしなくても見えているものについて、あえて、見えるようにするとは言いません。
普段は見えていないものを何か特別なことをして見えるようにするということです。
今、目の前に見えていることがすべてであり、それが事実を表しているのでしょうか。
時として事実は見えないものです。誰かが隠しているわけではないのですが、なぜか隠れてしまうのです。
事実には、原因と現象があります。
目の前に見えているのは現象です。
現象も事実ですが、現象だけを見て対策したのでは、問題をつぶすことはできません。
現象を引き起こしている原因をあぶり出して対策することによって問題を解決することができます。
残念ながら原因は目の前に表れてこないため、探求して見えるようにしなければなりません。
現象とともに原因も見なければ、事実を見失ってしまいます。
見えているものしか見ない人は事実を見失ったり、見誤ったりします。
見えない原因を見えるようにして、対策をすることが合理的かつ有効な問題解決となります。
見える化は、問題解決をして異常を正常に戻すための管理手段ですから、トヨタでは、見える化を「目で見る管理」と言います。
「見える化」は、見えないものを見えるようにすることです。
見えないものを見えるようにするためには、たくさんの知恵と工夫が必要になります。
私たちは、常に競争にさらされています。
この見えるようにする「力」も競争力となります。
他社に見えていないものを先に見えるようにして手を打つことができれば競争において優位に立つことができます。
戦略立案する上で行うマーケット・リサーチなどはまさに市場の見える化をしていることにほかなりません。
見える化は人に行動を開始させるトリガー(引き金)
「見える化」の目的は、見えるようになることだと思っている人は少なくありません。
例えば、仕事の見える化というと
「自分の仕事をカードに書いて貼り出して、誰が何をやっているかわかるように見える化する」というように自分ではわかりきっている仕事をカードに書き出してお互いに見えるようにすることが「見える化改善」だと言うのです。
見えるようになっただけでは、何も良くなりません。
何か恩恵を得るためには、行動しなければなりませんし、何かを変えなければなりません。
今まで見えなかったものが見えるようになるということ自体は、知恵と工夫が必要であり、それ自体はすばらしいことです。
しかし、そこから行動を開始しなければ、今までと何も変わらないのです。
見える化とは、見えないものを見えるようにし、そこから、今までは行わなかった新たな行動が開始されてはじめて効果があるのです。
では、何か見えてから何をすればいいのか考えて行動を開始すればいいのでしょうか。
それは、今、何をどのように変えていけばいいか何もアイディアが無く、必要な行動が何であるかわからないままに、見たいものを見えるようにしているだけのことになります。
自分たちの仕事において、何をどのように変えて良くしていきたいのかを明確にし、そのために必要な行動が何であるのかを定義し、その行動を開始するために何が見えるようにしなければならないかを明らかにしていくことができてこそ、見える化を行う価値があります。
見える化は、仕事をよくするために何かを変えるために必要な行動を開始させるトリガー(引き金)であり、必要な行動が開始されない見える化は、何も価値がない単なる見えた化にしか過ぎません。
見える化は主観を排し、事実に基づく行動をさせる(現地現物)
「見える化」は、徹底して今の事実を見ようとします。
事実は普遍でも不変でもありません。時と場所、環境などによって事実はコロコロと変わります。
過去の事実は、未来の事実ではありません。
去年売れたモノが今年も同じ理由で売れるとは限りませんし、来年は売れないかもしれません。
日本で売れたモノが中国で売れるとは限りませんし、中国で売れているモノが日本で売れない場合もあります。
過去の経験から未来を予測することは無効ではありませんが、それだけに頼っていくことはリスクが大きすぎます。
過去の経験はそれを統計的に整理して、傾向や法則を導き出します。
そして、今、現在の事実を拾い上げて、過去の経験から得た傾向や法則と照らし合わせて、直近の未来を予測して手を打っていくのです。
先人の知恵や工夫、過去の事実は、未来をつくりあげていく上で、貴重な材料です。
しかし、その材料の中の何を、どのタイミングで、どこに使えばいいのかわからないまま、現象が過去の状態と似通っているからと適当に使っていたのでは、せっかくの材料が何の役にもたちません。
完了してしまった結果のデータを得るのは容易いですが、完了前の途中段階での事実データを得ることは意外と難しいのです。
ですから、多くの組織は、データの得やすい過去の事実から未来を予測して、計画して、その計画に従って現在の事実を見ないままに行動するというスタイルで仕事しています。
「見える化」は今この瞬間、現在の事実を見えるようにして、確実に良い結果が得られるように調整を繰り返していくことです。
結果から次の計画をすることを繰り返すマネジメントではなく、現在の事実から今の行動を調整することを繰り返すマネジメントをめざすものです。
見える化は夢を見せ期待させる
「見える化」は、見えないものを見えるようにすることですが、見えないものは事実だけではありません。
未来の事実としたいもの、つまり、夢も見えないものの1つです。
事実はできあがるものではなく、自らつくりあげていくものです。
良い結果を得たいのであれば、それをめざして行動しなければなりません。
しかし、めざすものがわからなければ、何をすればいいのかわかりませんし、結果が良いものになるとは限りません。
めざすもの=夢を描き、それを組織で共有し、その夢に向かってみんなが協力して行動してこそ夢は実現するのです。
夢を見える化し、将来への期待とそれを担う自分たちの役割を認識させることが組織を成長させていきます。
見える化は常に見えるようにするモノと行動を対として考えていきます。
夢も単にありたい姿や状態を描いただけでは、行動できません。
行動が開始できるまで具体化されなければ、見える化された夢とはいえないのです。
一人ひとりの頭の中にある夢は、暗黙知としての状態で、そのままでは人には伝わりませんし、まして共有などできません。
暗黙知の夢をお互いに理解でき、何をしていけばいいのかわかるように形式知化していく作業が必要です。
夢の見える化は、頭の中で暗黙知化している夢を形式知化して、共有し、行動につなげていくことです。
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