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4.272021
ワーキングメモリーに頼らない仕事術で仕事力を飛躍的に高めよう!
記憶に頼らず仕事の集中力を高めミスを減す仕事の仕方とポイント
ワーキングメモリーの間違った使い方をすると仕事の生産性は落ちます。
ワーキングメモリーとは、目の前の仕事をするために、仕事を理解し、考えて、アウトプットする一連のプロセスの中で、必要な情報を一時的に保持していく記憶のことを言います。
ところが、明日の仕事、今週の仕事など未着手の仕事の情報まで、ワーキングメモリーを使って記憶して仕事をする人がいます。
記憶に頼った仕事の仕方をする人です。
そもそも、ワーキングメモリーの記憶容量は、あまり大きくはありません。そこに未着手の仕事まで記憶させると、目の前の仕事の記憶領域は狭くなり、処理スピードは落ちてしまいます。また、情報が混乱して、間違えるリスクも高くなります。
記憶情報を長期間保持するために反復確認などの余分な動作も必要となります。
仕事力を高めるためには、このワーキングメモリーの領域を目の前の仕事に開放し、集中力と処理能力を高めるようにしましょう。
未着手の仕事に関する情報は、記憶しない、忘れても問題ないような仕事の仕方に変えることで仕事の生産性は高まり、メンタル面では楽になります。
ワーキングメモリーに頼らずミスを減らし生産性を高める仕事の仕方とポイントを紹介します。
<目次>
記憶の限界
・記憶のプロセス
・記憶の3分類
・エビングハウスの忘却曲線
・記憶に頼る仕事の危険とロスがいっぱい
安心して忘れる仕事の管理術
・失念の発生原因
・記憶によらず記録に基づいて仕事をするスタイル
・仕組みを使う仕事の習慣化
仕事の精度と正確性を高める仕事術
・正しく記憶できていないことの弊害
・記憶する情報の見える化
失念のないスケジュールの仕事管理術
・余裕の心の隙が失念を生む
・今日の仕事の見える化
記憶の限界
「仕事で必要なことが思い出せない」、「教わっても覚えられない」、「顧客との約束を忘れた」など、記憶の曖昧さや忘れてしまうことが、ミスや失敗の原因になることも多いものです。
記憶のプロセス
まず、記憶について見ていきましょう。
記憶のプロセスは、記銘、保持、想起の3段階からなります。記銘、保持、想起は、それぞれ符号化、貯蔵、検索とも言われます。
記銘とは、外部の刺激がもつ情報を処理できる形に変換して取り込むことです。
例えば、自己紹介の場面で、音声として聞き取った相手の名前と、視覚で捉えたその人の特徴などを結び付け、記憶として受け取れる形に変換して取り込むということが行われます。
保持とは、記銘されたものを保ち続けることです。
事例では、自己紹介の場面で取り込んだものが内部に維持されている状態です。
想起とは、保持されているものを取り出すことです。
例えば、再びその人に会った時に、その人を再認して、それに基づいてその人の名前が思い出されます。
簡単に言うと、記憶は、ある事柄を覚え、それを維持して、必要に応じて思い出すということで成り立っているのです。
しかし、記銘、保持、想起が常に上手くいくわけではありません。
どれかに失敗があると、覚えられなかったり、忘れてしまったり、思い出せなかったりするのです。
記憶の3分類
また、記憶は、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つに大きく分類されます。
感覚記憶は、各感覚器官で受けた外部からの刺激が感覚情報としてそのまま保持されるものです。最大数秒しか保持されない、最も保持期間が短い記憶です。
短期記憶は、感覚記憶に意識が向けられることで短時間保持されるもので、保持される容量にも限界があるとされています。
短期記憶は、時間の経過とともに失われますが、繰り返し呼び起こされた記憶は、長期記憶に移行します。
長期記憶は、比較的長い期間保持されるもので、容量にも制限がないとされています。
長期記憶には、言葉にできる記憶である陳述記憶と、言葉で述べることができない非陳述記憶があります。それぞれを宣言的記憶、非宣言的記憶とも言います。
陳述記憶は、更に、個人が経験した出来事に関する記憶であるエピソード記憶と、知識に関する記憶である意味記憶に分類されます。
非陳述記憶には、自転車の乗り方など、いわゆる「体で覚える」記憶である手続き記憶、プライミング、古典的条件付け、非連合学習などが含まれます。
各記憶の特徴から、長期記憶に移行できると、長期間忘れない状態をつくることが可能と言えそうです。
エビングハウスの忘却曲線
エビングハウスの忘却曲線というものがあります。これは、ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが、実験により、記憶を数量的に測定し、導き出したものです。
人は、時間の経過とともに記憶が薄れていくことを、経験として知っています。
長い期間覚えているには、再学習、つまり、再度覚え直して、最初に記憶した状態に戻すという作業が必要になります。
忘却曲線の縦軸は、その再学習時に、どのぐらいの時間または回数を節約できるかという節約率になっています。
節約率は、最初に覚えるのに要した時間および回数と、再学習に要した時間および回数の差を基に算出されました。
実験の結果は、20分後には節約率が58%、1時間後には節約率44%、9時間後には節約率35%、1日後には節約率34%、2日後には節約率27%、6日後には節約率25%、1か月後には節約率21%でした。
「1日後に節約率34%」とありますが、これは、「1日後では、最初に覚えるのに要した時間の66%の時間で覚え直すことができる」ということです。
節約率が高いほど、一度記憶したことを覚え直すのにかかる労力が小さいと言えます。
節約率は、覚えた直後に急速に低下し、その後は緩やかに低下していきます。
このことから、再学習は、できるだけ早いうちに行ったほうが効率がよいと言えるでしょう。
忘却曲線は、記憶を維持している割合や忘却の割合を示したものではありません。
ただ、「節約率が高い」ということは、「それだけ記憶の維持率が高い」、または、「それだけ忘却率が低い」という推測も可能かもしれません。
そう考えると、人は、覚えてすぐに、かなりの割合を忘れてしまうということになります。
記憶に頼る仕事の危険とロスがいっぱい
記憶を維持するためには、繰り返し聞いたり、繰り返し書いたりします。
また、何かと関連付けて覚えたり、キーワードを付けたりするなど、覚える工夫や努力をします。
しかし、忘却曲線でも見たように、残念ながら、どんなに覚え直しても、人は忘れてしまうのです。
覚えることでは、仕事のミスや失敗を完全に防ぐことはできません。
記憶に頼る仕事は危険で、ロスも大きいのです。
ですから、忘れないために覚える努力をするよりも、覚えなくてもよい仕組みをつくり、運用しましょう。
安心して忘れる仕事の管理術
失念の発生原因
では、失念が発生する原因を考えてみましょう。
仕事のインプットがどこにあるかは、依頼元によって異なります。
例えば、上司から指示があった仕事はノート、他部署からの依頼はメール、事務処理の仕事は伝票や依頼書として受付箱などとなっていたりします。
このように、仕事のインプットがさまざまな形態で別々に置かれていると、それぞれの仕事の内容や納期を読み取り、頭の中で組み立てて仕事をしなければなりません。
これが、失念を発生させるのです。
記憶によらず記録に基づいて仕事をするスタイル
仕事の失念を防ぐためには、記憶によらず、記録に基づいて仕事をするスタイルにすることです。
このような仕事のスタイルには、「ToDo型のかんばん方式のタスク管理」が有効です。
まず、やらなければならない仕事をタスクカードに書き出します。
タスクカードとは、実行しなければならないタスク、つまり、作業内容が記載されたカードです。
担当者が読んで、何をするのか理解できる内容で記載します。
何を管理したいかによって、タスクカードに記載する項目は変わります。
次に、作成したタスクカードを、管理ボードの「着手前」の欄に貼り出します。
管理ボードは、タスクカードを並べたり、掲示したり、リストしたりする「場」です。
事例は、「担当別ToDo型タスク管理ボード」です。
管理ボードは、管理目的によってさまざまな形態のものがあります。個人でタスク管理を行うことも可能です。
次に、実際に仕事に着手する段階では、作業開始時に、該当するタスクカードを「実施中」の欄に動かします。
そして、その作業が終わったら、「完了」の欄にタスクカードを動かします。
また、ある作業を実施中に、相手方の返事待ちなど、作業を一旦止めるようなことがあれば、「保留」の欄に該当するカードを移動します。
すべての仕事を一元的に管理することで、プランニングやスケジューリング、進捗管理も可能になり、仕事の抜け漏れや保留のまま忘れてしまうなどのミスを防ぐことができます。
仕組みを使う仕事の習慣化
仕組みを導入しても、記憶に頼った仕事を続け、中途半端な使い方になると、仕組みは機能しなくなり、行うべき仕事を忘れてしまったりして、ミスや失敗が発生します。
ですから、仕組みを導入したら、仕組みを徹底して使って機能させることが大切です。
出勤したら、必ず、管理ボードの前に立って、その日にやることを確認することを意識的に行います。
行うべき仕事が発生したら、必ず、タスクカードを作成して、管理ボードに貼ります。
作業を開始した、保留中、作業が終わったなど、作業のステータスが変わったら、必ず、該当する欄にそのタスクカードを動かします。
このような行動を2週間から1ヶ月続けると、次第に無意識の行動となってきます。
仕組みを使うという行動を習慣化するのです。
ただ、一度にたくさんのことを習慣づけようとすると、混乱したり、どれもが中途半端になったりすることがありますので、一つずつ確実に習慣づけを行いましょう。
仕組みを確実に使うことで、安心して忘れる仕事の管理によって集中力と処理能力が高まり、ミスや失敗も防ぐことができます。
仕事の精度と正確性を高める仕事術
正しく記憶できていないことの弊害
新しい仕事を行うときは、その方法や手順を覚えようとします。
覚えたことをすぐに仕事に反映でき、的確に実行できる人もいれば、なかなか仕事に反映できず、的確に実行できない人もいます。
覚えたことを的確に実行できなければ、ミスや失敗を生み、生産性も下がります。
なかなか仕事に反映できない人の能力だけを責めて、「物覚えが悪い」と言われることがあります。
この覚えるべきことを的確に実行できない、物覚えが悪いということには、記憶以外にも原因がある場合があります。
記憶力の問題ではなく、誤解や誤認識の可能性があるのです。
覚えるべきことを、正しく、適切に理解、認識しているのではなく、それ自体を間違った理解、間違った認識のまま覚えてしまうということです。
また、新入社員などによくあるのが、理解不足です。
新人は、まだ仕事の全体を把握できておらず、覚えるべきことが断片的であったりします。
一部を覚えて、一部を知らない状態になっているのです。
この時、知るべきなのに知らないことを、本人が認識できていないことも多いです。
わからないことがわからないという状態です。
適切な理解をする土台がまだできあがっておらず、理解不足を生むということです。
ミスや失敗の原因を辿ってみると、誤解、誤認識、理解不足が基になっていることも多いのです。
記憶する情報の見える化
この「誤解」、「誤認識」、「理解不足」を防ぐためには、覚えるべきことを、文章や図でわかりやすく「見える化」します。
研修や仕事の指示を受けるときに、「メモを取りなさい」と言われるのも、これと同じことです。
また、最初の段階で、伝える側が全体像や概要を図式化、文書化して、それに基づいて、覚えるべきことを明確にしていくことも有効です。
それがないようであれば、メモしたことを基に、自分で全体像や概要を図式化、文書化します。
その作業を通じて、うろ覚えや説明できないところ、つながりがわからないところなど、十分に理解していない部分を認識しやすくなります。
そして、伝える側に疑問点や不明点を質問し、誤解や誤認識がないかを確認します。
覚えることをインプットする時から、ミスや失敗の原因となるものを取り除く意識を持って、工夫してみましょう。
失念のないスケジュールの仕事管理術
余裕の心の隙が失念を生む
また、スケジュールの余裕と失念の発生には関係があります。
仕事の指示を受けて、その納期が1週間後だったとします。
スケジュールに余裕があると、すぐにやらなくてよいという思いが先に立ち、「後でやろう」となりがちです。
そして、定例業務などの仕事をしたり、緊急の案件に対応したり、忙しくしているうちに、日にちは過ぎていきます。
その結果、指示を受けた仕事を忘れてしまうことにつながります。
納期当日に思い出しても、処理が間に合わず、納期遅延を発生させたりします。
また、焦って行う仕事にはミスがつきものなので、慌てて処理をして、品質の低いアウトプットを生んでしまったりします。
その結果、信用低下や期待したスキルレベルではなかったと評価されてしまうこともあります。
これでは、たとえ納期に間に合ったとしても、その仕事は失敗を意味することになります。
このように、スケジュールに余裕を持たせがちですが、実際は逆に問題を起こすことが多いのです。
スケジュールの余裕が変な安心感を生み、その安心が忘れることにつながり、失念ミスの発生リスクを高めてしまうのです。
今日の仕事の見える化
指示を受けた仕事の納期がその日中の場合、ほぼ忘れることはないでしょう。期間が空けば忘れやすく、今日の今日は忘れにくいのです。
ですから、今日やらなければならない仕事は、今日わかればよいのです。
これは、ただ無計画にその日暮らしのように仕事をしなさいと言っているわけではありません。
仕事が発生したら、そのときに、その仕事の計画を立てます。
かんばん方式のタスク管理では、仕事を作業に分解して、各作業単位でタスクカードを作成し、カードに着手日、納期を記入します。
着手日を決め、いつ、その作業を行わないといけないかを明確にしておくことが重要です。
そして、タスクカードを管理ボードの「着手前」の欄に貼り出しておきます。
これで、管理ボードを見れば、その日に行うことは、当日に見ればわかるようになります。
出勤したら、管理ボードの前に立って、今日やることを確認するわけですから、当日まではその仕事を忘れておきます。そして、その日の仕事を当日確認して行います。
仕事が発生した段階で、変に余裕を持つのではなく、計画を立て、当日見ればわかるようにして、仕事を忘れられる管理ができる仕組みを持つことが大切です。
記憶より確実な仕組みを持ち、その運用を習慣化しておけば、頭の中に抱えておくものはありません。
記憶から解放される分、注意深くなったり、集中力が高まったりします。
失念ミスの防止以上に、仕事の質を高められる可能性もあります。
まずは、記憶に頼らずに仕事を管理できる仕組みを持ちましょう。
記憶に頼らない仕事の仕方の動画も公開中!
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